2019.01.15
相続法が約40年ぶりに改正。身内が亡くなったとき私たちに何が起きる?

大切な人が亡くなったとき、とにかく面倒なのが相続に関する手続きです。ときには故人の遺産をめぐり身内でもめごとが発生してしまうなど、相続はトラブルが多いのも事実です。
民法では相続関連についての基本的なルールを定めていますが、このいわゆる「相続法」が前回改正されたのは1980年。なんと約40年前まで遡ることになります。この間に、社会環境も国民の意識も変化し、現行の相続法ではさまざまな問題が発生し始めました。そこで、2018年7月に相続法が改正・公布され、2019~20年にかけて順次施行されます。
今回の改正の主な要因は高齢化の進行で、高齢の配偶者への配慮や、手続きの簡素化などが行われます。早いものは2019年1月13日に施行され、遺言書が全文手書きではなくてOKとなりました。
改正で何が変わるの?
では改正によって、具体的に何がどう変わるのか? スケジュールと照らし合わせて、ポイントをまとめてみました。
◎2019年1月13日
・自筆証書遺言が全文手書きではなくてもよくなる
◎2019年7月13日まで
・相続人に対する10年以上前の生前贈与分は遺産としてカウントしない
・20年以上夫婦であれば、故人が配偶者に贈与した居住不動産は遺産としてカウントしない
・相続の権利がない親族でも、介護した労力を金銭として請求できるようになる
・故人の遺産から預貯金の仮払いが可能になる
・万が一、勝手に遺産を処分されてもあったものとして遺産分割される
・遺言執行者の権限の明確化
・遺留分は金銭として請求することになる
・登記(対抗要件)を行わないと、第三者にとられる可能性が出てくる
◎2020年7月13日まで
・「居住権」という新しい権利ができる
・自筆証書遺言が法務局で保管可能になる
※2018年11月19日現在の情報です。改正日は期日内のいずれかの日に決定する可能性があります。
実はとても労力がかかっていた遺言書の作成
直近で改正された遺言書に関するルールを見て、「これまで遺言書ってすべて手書きだったの!?」と驚いた人もいるかもしれません。
たとえば土地を相続させたいときは、法務局で登記されている登記記録の通り、地番、地積、地目などを記入する必要があります。しかもそれは遺産を分与する相手ごとに、一つひとつ漏れなく書かなければいけません。さらに誤字や脱字などのミスがあった場合、訂正印はもちろん、変更した旨を付記する必要がありました。不動産や預貯金、株式、投資信託など遺産が多い人ほど財産目録が長く複雑になり、かなりの労力が必要であることは想像に難くありません。
今回の改正では、遺産を一覧にしたページ(財産目録)はパソコンで作成することが可能になり、不動産の登記事項証明書や預貯金通帳などはコピーの添付が有効となりました。ただし偽造を防止するために、すべての書類の末尾に本人の署名と押印が必要になります。
これまで以上に「終活」が大切に!
改正によって、例えば故人を献身的に介護してたのに相続権がない嫁が「特別寄与料」を請求できるようになったり、配偶者は遺産分割協議までは故人の家に住むことができる「配偶者短期住居権」が新設されたり、これまで何かともめごとが起きやすかった事案が法的に整備されることになります。
また、他にも10年以上前に生前贈与されたものは遺産の対象外になるなど、改正される相続法には、実はこれまで以上に「終活」が重要になるポイントが潜んでいます。財産を大切な身内に残すためにも、他人事ではなく自分事として、遺産相続に向き合う良い機会になるかもしれませんね。
(出典:『大切な身内が亡くなったあとの手続きの本 2019年改訂版』)
(K)
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¥842(税込)
(2018.11.27発売)
ISBNコード|978-4-7779-5356-1
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